ブームの中で「注意喚起」も出た熟成肉 明治大学と微生物を研究した飲食店の挑戦

美味しい熟成肉を安全安心につくるため、微生物について大学と共同研究を続けた結果…

旬熟成

ナッツのような独特の香りとうま味が人気を集めている熟成肉。しかし今月、東京都が昨年度11の食肉業者を対象に実施した「熟成肉」についての調査結果が報じられ、話題を呼んだ。

熟成期間が14日〜100日と業者によってまちまちだったこと、提供する際はトリミングして取り除かれる肉の表面から、食中毒を引き起こす恐れのあるリステリア菌が発見された業者が2つあることも報告されている。

熟成肉をめぐる問題は、どのようなものなのか。そもそも「肉を熟成させる」とはどういうことなのか。しらべぇ取材班は、東京・六本木でレストラン『旬熟成』を営む跡部美樹雄さんに話を聞いた。

 

■2012年末からブームに

餃子店などを展開していた跡部さんが、熟成肉の店を開いたのは2012年10月。当時、出始めていたキーワードを見て、「なんだろう?」と気になり、食べ歩きを始めたのがきっかけだったという。

跡部:早くから熟成肉に取り組まれていたある老舗の熟成肉店に伺ったときに、食べてみて衝撃が走りました。「これは、自分でもやりたい!」と。

 

当時はまだそれほど一般的ではなかったのですが、その年の12月に『Smastation』で来年のヒット予測ランキングに入ったんですね。そこから急にお客さんが入るようになり、取材も連日のように続きました。

 

ただ、この頃は私自身もまだ熟成のメカニズムをしっかり理解できておらず、「寝かせるとどういうわけか美味しくなる」という感覚でした。

 

■明大農学部と共同研究

旬熟成

跡部さんの好奇心は、ここで止まらなかった。2014年、明治大学農学部で応用微生物学を研究する村上周一郎准教授に熟成肉について相談して、食肉が熟成していく仕組みの共同研究を始めたのだ。

跡部:村上先生と、熟成によるアミノ酸や脂肪酸バランス、弾力性の変化などを研究していくうちに、肉の表面に生えるカビがなんらかの影響を与えていることがわかってきました。

 

麹菌や酵母の力を借りてつくる味噌や日本酒と同じように、熟成肉も発酵食品・保存食であることがわかったんです。だとすると、「いいカビを増やすことが重要なんだ」と。

 

熟成に影響していると思われる菌を分離して解析したところ、好冷菌の一種でヘリコスチラム属の菌ということが判明。この菌は、細胞毒性がないことが過去の論文から証明されている。

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■欧米流のドライエージングとの違い

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