しらべぇ

「12年間異動できなかった」復讐!? テレ東・濱谷晃一氏の異色のドラマ作り

『黒い十人の秋山』『下北沢ダイハード』『バイプレイヤーズ』などで知られるテレ東・濱谷プロデューサーにインタビュー!

エンタメ

「人生最悪の一日」をテーマに気鋭の11人の劇作家が11通りのストーリーを描き下ろし話題となった『下北沢ダイハード』。

大杉漣、遠藤憲一など6人の名脇役が同居生活を繰り広げる“おじさん版テラスハウス”こと『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』。

さらにロバート秋山が1人10役を演じる本格ミステリーとして、情報解禁後、ネット上で大いに話題となった特別ドラマ『黒い十人の秋山』。

そんな話題作をここ数年相次いで手がけているのがテレビ東京の濱谷晃一プロデューサーだ。

一見華やかにも思えるテレビドラマの世界。しかし、濱谷氏が今のポジションに至るまでにはさまざまな苦労があったよう。

テレビマンとしてのこれまでや創作の裏側、そして最新作『黒い十人の秋山』の舞台裏を聞いた。

 

■9年間も出し続けたドラマ部門への異動願い

濱谷晃一プロデューサー

学生時代から映画・演劇が大好きだったという濱谷氏。当初からドラマ制作が希望だったが、テレ東入局から12年間はバラエティ部門に在籍することになる。

濱谷氏:「生意気に思われるから最初の3年間はドラマ志望って言うな」って先輩から言われていて、実際3年間はそうしていたんです。でも、3年過ぎてから毎年異動希望を出してたのに、さらに9年間も通らなかったんですよね。当時は正直ひどい会社だなって(笑)

 

当時のテレ東は「女と愛とミステリー」みたいな2時間サスペンスしかなく、またドラマの枠も少なかったんで、若い人員が必要なかったと後で知りました。それから、枠も徐々に増えてきた結果、やっと異動できたのが若くもない35歳のときのことです。

 

■同世代が気になって仕方なかった20代

濱谷晃一プロデューサー

異動までの間、濱谷氏が何もしていなかったわけではない。バラエティ番組のスタッフとして日々忙しく働く中、シナリオの専門学校に通っていたこともあるという。

濱谷氏:20代の終わり頃、「このままだと自分、本当にドラマ部に移れないかもしれない」「ドラマや映画を撮れないまま人生終わるんじゃないか」って真剣に思うようになりました。

 

というのも、20代の頃は自分の同世代がどんな活躍をしているかが気になって仕方なかったんです。

 

20代半ばの同世代がすでに映画を監督しているのに、自分はバラエティのディレクターとADの兼任みたいなポジションで焦ってました。

 

だったら「バラエティ班にいながらでも、自分で脚本書いて企画を通せば、ドラマを監督できるんじゃないか」と思うようになって。働きながら土曜日にシナリオの学校に通ったり、他局のシナリオコクールに応募したりしていました。

 

20代後半に差し掛かったタイミングで、自分の人生を改めて真剣に考えた経験がある人は少なくないだろう。この記事を読んでいる人の中にも、今がちょうどそのときだという人もいるかもしれない。

今、ドラマファンの熱い視線を集めている濱谷氏にも、そんな若かりし頃の「焦りの日々」があったのだ。

 

■バラエティでの経験がドラマ作りに貢献

だが、そんな王道からは外れた経歴が、今の作品作りにつながっているようだ。たとえばマンガ原作が非常に多い今のドラマ界にあって、濱谷氏は手がける作品の多くがオリジナルだ。

濱谷氏自分がオリジナルにこだわるのもバラエティでの経験が大きいと思います。

 

「僕、こんな面白いマンガを見つけました!」よりも、「僕、こんな面白いこと考えつきました!」の方が、刺さった時の手ごたえが大きいんですよね。

 

また、企画を練る作業にもバラエティでの経験が反映されている。ドラマの企画において通常、プロデューサーは原作を探すか、脚本家と打ち合わせをして企画を膨らませていく。そして、ドラマ作りにおいても撮影は専業の監督が指揮をとり、脚本は脚本家が仕上げる。

しかし、「ディレクターが自分で台本を書いて、自分で撮って、自分で編集する」のが普通だったバラエティの世界に10年以上も身を置いていた濱谷氏は、いいアイデアを思いつくと、まず自分でプロット(ストーリーの大まかな流れのこと)を書いてしまうのだとか。

濱谷氏:企画を思いついたとき、まず自分でプロットを2~3枚書いてみるんです。それで面白さの検証をして、暇でテンションがあがっていると自分で1話を書いてみる。

 

バラエティに12年いたので「自分の中から生み出す」という考え方が染みついているんだと思います。

 

■転機は「キョンシー×アイドル」の作品

濱谷晃一プロデューサー

昨今、社会人の働きは多様になりつつある。副業やマルチワークなどと言う言葉で形容されるが、濱谷氏もじつはバラエティ部在籍時から自身のドラマを手がけるようになった。

濱谷氏:ドラマの企画募集にキョンシーとアイドルが戦う企画(2012年に『好好!キョンシーガール 東京電視台戦記 』としてドラマ化)を出したところ、主演をキャスティングしてきたらやっていいよと会社に言われたんです。

 

そこで当時「9nine 」のメンバーだった川島海荷さんの事務所にお願いしたのですが、当たり前ですが「脚本を読ませていただかないとなんとも……」と言われまして(笑)

 

 

 

■「ルール違反」が強みに変わった

やっと訪れたチャンスだが、当時の濱谷氏は経験だけでなく、人脈も持っていなかったそう。

濱谷氏:企画が正式に決まっていない中、タダで書いてくれる脚本家の知り合いも当時はいなかった。だから、「じゃあ自分で書いてみるか」となったんです。

 

ドラマ未経験の人間が「脚本・監督・プロデューサーです」って企画書を持っていくんですから、今思うと恥ずかしいんですけど(笑) 川島さんもよく出てくれたなと思いますね。

 

分業化が確立されたドラマの世界で、プロデューサーが脚本を書くのは本来ご法度なことだそう。

しかし、バラエティの世界にいた濱谷氏は、いい意味でそういう常識には縛られておらず、だからこそ局の社員でありながら監督・プロデューサー・脚本を兼任することができたのだ。

濱谷氏:バラエティにいなかったら、おそらく脚本も監督もやらなかったと思います。ドラマの世界のやり方に馴染んでいたというか。

 

異動したばかりの頃、脚本も監督も全部自分でやりたいと言って、先輩に「お前は本当にドラマというものをわかっていない」と言われたことがあるんです。今ならその意味がわかるけど、当時の自分は「ドラマに対する敬意」が足りなかったんでしょうね。

 

と言いつつ、今回の『黒い十人の秋山』でも脚本を書いてるから、まだわかってないのかもしれません(笑) 

 

もしかすると、異動希望が通らなかった鬱憤を、僕はバラエティ経験を活かしたドラマ作りで今になって吐き出していのかもしれませんね。ある意味、僕のテレ東への復讐です(笑) 

 

もちろん、今ではその経験にも感謝してますけど。

 

■最新作『黒い十人の秋山』が26日に放送

冒頭でも紹介したが、そんな濱谷氏がプロデューサーを務め、共同で脚本も手がける最新作、『黒い十人の秋山』が26日夜11:30から放送される。

本作のストーリーはこんな感じ。

嵐の夜、離島のホテルで客の本庄一朗(滝藤賢一)が殺された。宿泊していた刑事・桐島さなえ(仲里依紗)と部下・取手健(満島真之介)は、停電の間に出入りした10人の宿泊客の中に犯人がいると断定。

 

オペラ歌手・冴島響一郎、トータル・ファッション・アドバイザー・YOKO FUCHIGAMI、美人秘書の戻川茜、外国人画家のパトリック・ベイカー、ファッションモデルのリシエル、サーファーのヒデト、プロゴルファーの犬塚聡子、美容整形外科医の財津隆也、建設会社社長の神取忠、猫を飼う男・村田安夫など、容疑者は一癖も二癖もある怪しい人物ばかり(すべて秋山竜次)。

 

さなえ、取手に加え、なぜかホテル従業員でさなえの従姉の桐島ケイ(堀内敬子)の3人で捜査を進めるが、全員アリバイがあった。さらにホテルのオーナー大城武史(山内圭哉)にも疑惑の目が向けられ、事態は混迷を深めていく。

 

次々と現れる証拠や証言で意外な人物が浮かび上がる…そこには過去の陰惨な未解決事件が関係していた! 真犯人は一体誰なのか…! ?(公式サイトより)

 

■『黒い十人の秋山』が生まれたきっかけ

黒い十人の秋山

©テレビ東京

ミステリの王道設定を「ロバート秋山が1人で10役を演じる」というスパイスで華麗に新しい作品へと変わった本作。発想のきっかけはどこにあったのだろうか。

濱谷氏:もともと『クリエイターズ・ファイル』が好きだったというのもあるんですけど、『下北沢ダイハード』に秋山さんに出演していただいたころ、『スプリット』という映画が上映されてたんです。

 

これは23もの人格のある監禁犯に女子高生たちが監禁されるお話なんですが、秋山さんがその監禁犯役をやったら面白いだろうなと思いつきまして(笑) そして、秋山さんのサスペンスを企画しました。

 

いつもオリジナルのドラマを作る際は「ギャップ」を意識しているんです。そういう意味では『クリエイターズ・ファイル』とサスペンスは真逆で絶対面白いなって。

 

■絶妙なタイトル付けの秘訣

(『黒い十人の秋山』主演の秋山竜次。1人10役という難役をどう演じるのか)

濱谷氏の作品の特徴のひとつは、作品タイトルのキャッチーさだ。『太鼓持ちの達人 ~正しい××のほめ方~』『ワーキングデッド ~働くゾンビたち~』『俺のダンディズム』など、彼の作品はその名前を聞いただけで「えっ、なにそれ?」となってしまう独特のセンスを持っている。

濱谷氏:過去の名作のフォーマットをお借りしているというか、パクリっぽいのが多いですよね(笑) 『俺のダンディズム』も神谷町に『俺のイタリアン』があったのを見てつけたってのがあったんで、過去に作ったのもどれもダジャレですね。

 

ちなみに、『黒い十人の秋山』はかの市川崑監督の作品『黒い十人の女』が元ネタ。濱谷氏の遊び心や、その奥にある映画への造詣の深さが伝わってくるエピソードにも思えるが……

濱谷氏:でも十人ってほんと大変で。『男女七人秋山物語』くらいがちょうど良かったなって撮った後は思いましたね。それか『隠し砦の三秋山』とか。逆に『十二人の怒れる秋山』はさすがに無理ですね(笑)

 

なお、『黒い十人の秋山』の舞台裏については、下記の記事でもレポートしているので気になった方はぜひチェックしてみてほしい。

繰り返すが、放送は26日の夜11時30分からだ。

・合わせて読みたい→ロバート秋山の1人10役ドラマ『黒い十人の秋山』舞台裏が壮絶すぎた

(文/しらべぇドラマ班・岡本 拓

関連記事

人気記事ランキング

ライター募集中 記者・編集者募集 fumumu