1週間でたった3.31秒 映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』が尋常じゃない

シャーリーズ・セロンやマシュー・マコノヒーが声優で参加。世界が注目する3Dストップモーション・アニメが日本公開

ホビー

2017/11/19 08:00

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』© GAGA Corporation.)

18日、英国アカデミー賞アニメ映画賞を受賞した『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(以下、『KUBO』)が公開された。

ストップモーション・アニメの制作において、世界最高と評されるスタジオライカが封建時代の日本を舞台に描いたファンタジー作品で、本国アメリカでは2016年8月に公開。

製作・監督は『トランスフォーマー』のスピンオフ『バンブルビー』も控える、トラヴィス・ナイト。声優陣は主人公・クボをアート・パーキンソン、クボと共に旅をするニホンザルはシャーリーズ・セロン、クワガタはマシュー・マコノヒーなど、錚々たる顔ぶれが揃う。

アカデミー賞では、長編アニメ映画賞と視覚効果賞にノミネートされ、視覚効果賞については『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)以来、2例目となるアニメ映画のノミネート作になったことも話題を呼んだ作品だ。

■少年の旅と冒険の物語

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』© GAGA Corporation.)

主人公は三味線の音色で折り紙に命を与え、自在に操る不思議な力を持つ少年・クボ。幼い頃、闇の魔力を持つ祖父・月の帝に狙われ、クボを助けようとした父・ハンゾウは命を落とした。その時片目を奪われたクボは、最果ての地まで逃れ母と暮らしていたが、更なる闇の刺客によって母さえも失くしてしまう。

母に肌身離さず持っているよう言われたサルのお守りが、本物のニホンザルに変わり、月の帝を倒すために三つの武具を探す旅に出る。

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』© GAGA Corporation.)

クボが無意識に命を吹き込んだ父・ハンゾウの形の折り紙が、武具への道を示し、旅を続ける途中で陽気なクワガタに出会う。弓の名手であるクワガタは記憶を失っていたが、元は人間の侍でハンゾウに仕えていたと語り、旅の道連れに。

なぜ、クボは狙われ続けるのか? クボたちは武具を手に入れ、月の帝に打ち勝つことはできるのか? 三味線に隠された秘密とは――。

美しい日本の風景の中で、三味線と折り紙の大道芸を見せるクボの姿や、ニホンザルとクワガタとの旅、そして闘いのシーンなど、高いクオリティの映像とストーリー展開は、子供から大人まで強く惹き付けられるだろう。

 

■制作にかかった工数がハンパない

(監督のトラヴィス・ナイト 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』© GAGA Corporation.)

ストップモーション・アニメといえば、人形を少しずつ動かし、それを1コマずつ撮影して積み重ねる工程を経ることで、作り上げられる。そうした積み重ねによって生まれる動きが、通常のアニメーションとは違った味わいを生み、それ自体がストップモーション・アニメの大きな魅力だ。

そして、『KUBO』公式サイト「TRIVIA」コーナーの「途方もない制作過程~驚愕の数字トリビア~」を見ると、この作品の制作工程の尋常じゃなさがよくわかる。

 

94週:総制作期間
1,149,015時間:総作業時間
3.31秒:1週間で制作される尺の平均
133,096コマ:総コマ数
30体:クボの人形の数
4,800万通り:クボの表情の数
3,000万通り:サルの表情の数
408個:一つのカットで使われた顔の最大個数
75分:骸骨の大広間で使われた1枚のタイルに色をつけるのにかかった時間(制作された総タイル数380枚)
4.9メートル:巨大骸骨の身長(ストップモーションアニメ史上最大)
5センチ:折り紙でできた小さなハンゾウの大きさ(ライカ作品の中で最小の人形)
250,000枚:落ち葉の船に使われたカラーペーパーの数
19ヶ月:落ち葉の船のシーンの撮影期間
177,187本:使われた綿棒の総数

 

1週間かけて、3.31秒しか撮影が進まないなんて、途方もない作業だ。

スタジオライカは、ストップモーション・アニメの会社。だから、こんなことを言うのは全く意味がないのだが、仮にこの作品を単なる3D CGアニメとして制作したのならば、こんな膨大な数字が出てくることはない。

しかも、この『KUBO』がすごいのは、同社が制作した2012年の作品長編映画『パラノーマン ブライス・ホローの謎』に続き、キャラクターの顔を3Dカラープリンターで作成しているところ。

大きな進歩を遂げている3Dプリンターだが、まだまだ出力に時間がかかったり、仕上げに必要な作業が別途発生したり、かなり多くの工数がかかる。

各キャラクターや、それぞれの表情の変化を表現するために制作したパーツの量を考えると、一般の人が作品を観ただけでは想像もつかない時間とコストが必要だったはずだ。

そのほかにも、公式サイトには多くのこだわりの制作過程について紹介されており、作品を観る前にチェックしておくと、より凄さが感じられるだろう。

 

■技術ではなくストーリーテリング

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』© GAGA Corporation.)

こうした新しい技術を用いた作品の場合、その技術を見せることにウェイトが置かれ、ストーリーがやや貧弱になってしまったり、微妙にマッチしないディテールが挿入されたりするなど、総合的には残念なケースも少なくない。

しかし、『KUBO』では監督・トラヴィス・ナイトが「僕らはストーリーテリングという偉大な伝統の継承者だ。古代ローマの円形劇場から、シェイクスピアで有名なロンドンのグローブ座まで、共有の場で物語を経験するのは、時間を超越したパワフルな儀式だ。僕らは観客の心にずっと残り続けるような忘れられないものを提供したい」とコメントしているように、冒険ファンタジーとして魅力的な作品に仕上がっている。

黒澤明と宮崎駿を敬愛し、漫画も大好きな日本マニアとしても知られるトラヴィス・ナイトは、スタッフと共に日本の文化や風習を徹底的にリサーチして本作を制作。美しい灯籠流しの映像や盆踊りの様子、クボが操る折り紙の造形などのディテールは、日本人から見ても素晴らしい。

また、随所に見られる浮世絵の影響を受けたビジュアルも圧巻で、葛飾北斎の作品や歌川国芳の錦絵などから、インスピレーションを得たという。

こうしたビジュアルは、エンドロールにもアニメーションとして散りばめられており、本編だけでなく最後まで楽しめる。

なお、タイトルにある「二本の弦の秘密」の意味は、エンドロールの途中に示されており、本編が終わったからといって、早々に席を立たないことを強くお勧めしたい。

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(文/しらべぇ編集部・くはたみほ

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